どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

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『振り返れば奴がいる』の名台詞を振り返る/最終回(第十一回) 「別離(わかれ)」(1993年3月24日)

      2015/10/24

前回、一昨年の3月に『振り返れば奴がいる』の記事を書いてから、何度か「フリヤツ」を見直し、この三谷幸喜さん脚本のドラマの名台詞を記録しておくべきだという義務感が湧いてきました。よって、ここに記すことにします。

その最終回(第十一回)です。

※一応、時間も表記しますが、CMを除いた大まかな経過時間です。
※なお、私が参考にしたのは再放送分なので、カットされた部分があると思われます。ご了承ください。

参考資料『月刊ドラマ』(映人社、1993年3月号) ※第一回~三回の掲載シナリオ

■最終回(第十一回) 「別離(わかれ)」

司馬 江太郎(27)……織田裕二さん
石川 玄(27)……石黒賢さん
大槻 沢子(26)……千堂あきほさん
峰 春美(25)……松下由樹さん
中川 淳一(45)……鹿賀丈史さん
×   ×   ×   ×
星野 良子(27)……中村あずささん
稲村 寛(33)……佐藤B作さん
中井 加世(22)……貴島サリオさん
富川 千代(24)……建部和美さん

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●4:40~
中川「それは、どういうことですか?」
司馬「僕なら、助けてみせます。石川は吐血もしているし、スキルスはかなり進んでいます」
中川「知ってますよ」
司馬「オペで助かる可能性は……、数%でしょう。――僕しか出来ない」
中川「君は、この病院を出て行く人ですよ」
司馬「まだ、辞令をもらったわけではありません。今すぐ、オペをやらせてください」
中川「それは出来ません。君に、頼むわけにはいきません」
司馬「なぜですか!」
中川「君は、石川くんを恨んでる。危険すぎます」
司馬「僕がわざと、オペに失敗するとでも思ってるんですか」
中川「……」
司馬「僕はドクターです。殺人鬼じゃない」
中川「一つだけ、聞かせてくれませんか。どうしてそんなにやりたいんですか? 石川くんのオペ。……彼に対する友情、そういうことを言いたいんですか?」
司馬「待ってください。言ったじゃないですか。僕は、ドクターなんです」
中川「……」
司馬「理由は一つ。――難しいオペだからです」
中川「……分かりました」

※もちろん我々視聴者は「難しいオペ」にチャンレンジしたいからではなく、「彼に対する友情」だと信じています。けれど司馬の口から「殺人鬼じゃない」という真っ当な言葉は聞きたくない気もします。

6:35
稲村「司馬先生を倒すことに、命かけてたからね。目標が達成できて、きっと……ピンと張ってた糸が、切れちゃったんだね……」
峰「……」
稲村「こんなことなら、もうちょっと司馬くんにも粘ってほしかったような気がするね」
峰「石川先生の人生って、何だったんでしょうか……。司馬先生をこの病院から追い出すためだけに……、そのことのためだけに石川先生は……。そんなのってありますか……、そんなのって……」
 

※最終回、峰は台詞を繰り返すことが多いように思います。台本通りかアドリブか分かりませんが、最終回らしい切迫感が溢れていて効果的に機能していると思います。

●7:52~
司馬「バイタルは?」
千代「血圧90の58。脈拍100、呼吸数24、体温37.4度です」
司馬「そうか……。ありがとう」
加世「先生! 先日は、告げ口なんかしてほんとにすいませんでした」
司馬「……仕事で返せ」
加世「はい!」

※このシーンで大事なのは、いつも見下していた看護師に対して、司馬が素直に礼を言ったところです。もしここで看護師に「ありがとうって初めて言われちゃった」などという台詞を付け加えたとしたら、脚本上も演出上も下手くそと言わざるをえないでしょうが、「フリヤツ」スタッフはそれくらい心得ているってことですね。

●8:53~
峰「どうして司馬先生なんですか?」
中川「彼しか、いないでしょう」
峰「司馬先生がやるって言ったんですか?」
中川「そうです」
峰「駄目です」
中川「なぜ?」
峰「嫌な予感がします」
中川「そりゃないよ」
峰「司馬先生は、石川先生に恨みをもっています」
中川「そりゃないって」
峰「分かりません!」
中川「彼が引き受けた動機はただ一つ。ドクターとしての興味です」
峰「私、反対です。絶対反対です!」

※最終回なので、司馬が手術するのはほぼ間違いないと視聴者は感じています。しかし今までの確執を考えるとこれくらいの葛藤が繰り広げられないと辻褄が合わないでしょう。

●9:37~
沢子「考えすぎよ」
峰「心配です」
沢子「司馬はそんな奴じゃないって」
峰「でも……」
沢子「あの人はね……、助けたいのよ、石川先生を。確かに憎んでるわよ。憎んでるけど、司馬にとって石川先生は大事な人なの。彼だけだもん、司馬に盾突いたの。誰も愛せなくて、誰にも愛されなくて……、いつも一人ぼっちで……。だから嬉しかったと思うよ、石川先生が来てくれて。思いきりぶつかってくれて。――あの人はやる気だもん。司馬の腕に、賭けてみよう」
峰「……(うなずく)」

※「誰にも愛されなくて……、いつも一人ぼっちで」と言うと沢子との5年間は本当に何の意味もなかったのかという話ですが、峰を説得するための大げさな表現だと考えるべきでしょう。

●11:41
司馬「帰れ。今、あなたに付き合ってる暇はない」
星野「何よ、先生」
司馬「それに、あなたにとって僕はもう用無しですよ」
星野「先生?」
司馬「大事なオペなんだ……」

※このシーン、「大事なオペ」と司馬に言わせることに意義があったと思うのですが、事はそう単純ではありません。ここまでの数分は大いに疑問なのです。この前に、電話で司馬は誰かに「そうだ、大至急、今すぐだ。何が何でも用意しろっ」と何かを要求しています。そして現れたのが星野。普通に考えれば電話の相手は星野でしょう。そして現れた星野は「先生、例の薬、持って来ました」と紙袋を司馬に示し、司馬が「そこ置いといて」と返し、星野は「これは当社が自信を持っている物なんです。さすが司馬先生、また何か企んでるんですか?」と続け、司馬に新製品のパンフレットを見せようとしたところ、上記の「帰れ」になるわけです。この星野が持って来た薬は何でしょう? スキルスの手術で急に必要な薬なんてあるのでしょうか? この薬を使ったような描写は手術シーンにはなかったはず。何かの企みに使えるかもしれない薬って? まさか、司馬としては本当に外科手術の成功のみにドクターとして興味があり、それが自分の中で成功と判断できたら、手術後に石川をこの薬で殺そうと考えていた? つまり石川が手術後に急変したのは司馬の策略で、最期まで救おうとしたのは自作自演? ・・・なんてことは全く考えられませんよねえ。おそらく、主要人物である星野を何とか最終回に絡ませようとして、こんな疑問符の付く妙なシーンが出来上がってしまったのではないでしょうか。そして、遅筆の三谷さんなので、最終回でスタッフもキャストも慌ただしくて、このシーンの不自然さに気付けなかったのではないでしょうか。しかし、その後のソフト(ビデオやDVD)化の際には、このシーンのおかしさに気付けたのでしょう、星野が薬を持って来たという台詞はカットされています。でもどうせカットするなら司馬が誰かに電話したシーンもカットした方が良かったでしょう。

●15:05~
峰「サインしてください」
石川「出来ない。……もういいよ」
峰「石川先生……」
石川「僕はドクターだ。自分の体がどういう状態にあるのか、僕自身ようく分かってる。おそらく……、オペしても助かることはない」
峰「司馬先生なら何とかしてくれます」
石川「そこまでして助かりたいとは思わない」
峰「そんな」
石川「今さらあいつの力にすがって生き永らえるなんて……」
峰「石川先生!」
石川「もういいんだ」
峰「駄目です!」
石川「いいんだ!」
峰「諦めちゃ駄目です!」
石川「……僕の使命は終わったんだよ」
峰「違います! もっともっと生きて、たくさんのクランケ救ってあげてくださいよ。もっともっと生きて、もっともっとみんなを幸せにしてあげてください。諦めちゃ駄目だって石川先生言ってたじゃないですか! 何人もクランケ励ましてきたじゃないですか! 生きてください、もっと。お願いですから。司馬先生なら、必ず助けてくれます。石川先生を助けられるのは、司馬先生だけです。――お願いします」
石川「……分かった」

※峰の「もっともっと攻撃」は素直に名台詞だと思います。このドラマの長台詞の中で一番感動的かもしれません。

●19:15~
石川「僕は死にたくない……。死ぬのが恐い……。情けないだろ?」
司馬「……全然」
石川「君を信じてる」
司馬「やめてくれ」
石川「よろしく頼む」
司馬「俺一人の力じゃ、どうにもならん。俺はドクターとして、お前はクランケとして、スキルスと闘う。――はっきり言う。今の症状じゃ、助かる可能性はゼロだ」
石川「……」
司馬「それを、俺が10%まで引き上げる。お前は、20%まで上げてくれ」
石川「……分かった」
石川、握手を求めて手を差し出す。
石川「よろしく」
司馬「……うまくいったらな(と応じない)」
石川「……」
司馬「(行きかけて、ドアの前で振り返り)オペ室で会おう(と出て行く)」

※「死ぬのが恐い……。情けないだろ?」→「……全然」、「君を信じてる」→「やめてくれ」、クールな応酬です。「俺が10%まで引き上げる。お前は、20%まで上げてくれ」、最高にクールな台詞です。しかしその後に握手に応じない司馬+怪しい雰囲気のBGM(サントラには未収録)で、視聴者はドキドキ。イヤラしい演出ですよ、まったく。

●24:50~
中川「皮肉なもんですねえ。白と……黒の二人が、同じ目的に向かって、一緒に闘ってんですからねえ。……僕はね、二人とも失いたくないんです」
稲村「……」
中川「あんなに熱い奴ら、なかなかいませんから」
稲村「部長……」
中川「何とか頑張ってほしい。助かってもらいたいですねえ」

※「白と黒の二人」って、司馬の顔色はもともと黒色でしたが、後半は石川の顔色が病気で悪くなって白色になったので、説得力ありまくりです。

●31:40~
峰「司馬先生……! どうも、ありがとうございました!」
司馬「奢れよ(と微笑む)」
 

※手術が終了しました。司馬はここで、このドラマの中で初めての本当のスマイルを表しました。この人は2年前に「カンチ」を演じていた織田裕二さんだと思い起こした瞬間です。

●32:10~
中川「ご苦労様でした。大変でしたね」
司馬「肺梗塞でも、起こさない限り大丈夫でしょう」
中川「無事に終わって、何よりです。さすが、司馬先生、ですね」
司馬「……(笑む)」
中川「それと、これから、当てはあるんですか? もう一度一緒にやる気は……、ないよね?」
司馬「……ここに残るつもりはありません」
中川「そうだよね、虫が良すぎるよね。フフフ。あ、そうそう。カンザスからね、一人ドクターを招くことになりました。そういう根回しは早いんですよ」
司馬「……(笑む)」

※ここでも司馬が本当のスマイルを披露しました。こう何度もスマイルを見せられると、後から考えると、やはり何か「裏切り」があるのでは、と考えるのが自然なのかもしれません。

●33:45~
石川「司馬くん」
司馬「お前に、貸しが作れたのが一番嬉しいよ、俺は」
石川「ドクターがクランケを救うのは当然の義務だ。――君に借りはない」
司馬「僕は、もうすぐいなくなるんで、あとは峰くんに任す。峰くん」
峰「はい」
司馬「死んだ時は解剖して、研修医の奴らに見せてあげてください」
稲村「言うねえ。フフ」
司馬「それじゃあ……(と手を差し出す)」
石川「……(手を出し、握手する)」
司馬「お大事に」

※稲村は緩衝材の役割として、この「言うねえ」のようなちょっとした合いの手で、ドラマの雰囲気を上手に作り出していた重要な存在だったように思います。

●38:14~
司馬「(心臓マッサージをしながら)戻って来い! 石川!! 戻って来い!」 

※以上で名台詞・名言の観点からの『振り返れば奴がいる』の振り返りは終結しました。この後は賛否両論の後味の悪いシーンが待ち構えています・・・。それにしても、台詞自体の書き起こしは1年半前に終わっていたのですが、単に台詞を書いただけでは著作権上問題なので、自身のコメントも書く必要があり、それを捻り出しているとずいぶんと時間がかかってしまいました。もしかしたら、そのうちスペシャル版の名台詞も振り返るかもしれませんが、“それはまた、別の話”。

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