どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

~日本のドラマ・映画、俳優・女優やシナリオライター(脚本家)などを徹底解剖~

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『振り返れば奴がいる』の名台詞を振り返る/第十回 「最後の対決」(1993年3月17日)

      2015/10/24

前回、一昨年の3月に『振り返れば奴がいる』の記事を書いてから、何度か「フリヤツ」を見直し、この三谷幸喜さん脚本のドラマの名台詞を記録しておくべきだという義務感が湧いてきました。よって、ここに記すことにします。

その第十回です。

※一応、時間も表記しますが、CMを除いた大まかな経過時間です。
※なお、私が参考にしたのは再放送分なので、カットされた部分があると思われます。ご了承ください。

参考資料『月刊ドラマ』(映人社、1993年3月号) ※第一回~三回の掲載シナリオ

■第十回 「最後の対決」

司馬 江太郎(27)……織田裕二さん
石川 玄(27)……石黒賢さん
大槻 沢子(26)……千堂あきほさん
峰 春美(25)……松下由樹さん
中川 淳一(45)……鹿賀丈史さん
×   ×   ×   ×
星野 良子(27)……中村あずささん
稲村 寛(33)……佐藤B作さん
笹岡 繁三郎(41)……坂本あきらさん
笹岡 房江……青木和代さん
内村 恵美(27)……宮地雅子さん
中井 加世(22)……貴島サリオさん
理事長……林昭夫さん

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●1:10~
稲村「あの男はさ、石川先生が手をわずらわさなくたって、いずれ落ちていきますよ。世の中、悪の栄えたためしはないんだから。ね?」

※この時は、稲村さんの台詞に深い意味があるなんて思ってもみませんでした、あくまで一般論に過ぎないとしか。

2:05
星野「NRD、石川先生のために購入したんじゃないの?」
司馬「……」
星野「私そう踏んでるの」
司馬「(あざけり)冗談だろ。何で俺がそんなこと?」
星野「はずれ?」
司馬「NRDが入るのは、来月だろ?」
星野「ええ」
司馬「その頃、あいつはもういないよ」
 

※石川とNRDの関係について司馬は一応こう語っています。ただ、「来月には石川はいない」との言葉と最終回での必死な手術は矛盾しているようにも思えます。ここにきても真意が掴めない司馬です。

●7:30~
沢子「中川先生が言ってた。司馬先生ね――」
石川「もうその話は。彼のことで頭を悩ますのはもうやめたんです」
沢子「そうなの」
石川「時間は有効に使いたいもので」
沢子「それがいいかも」

※だけど、やっぱり後半では司馬のことに時間を使うことになる石川です。まあ、司馬が問題行動(?)をしたから否応なくという面もありますが。

●10:39~
司馬「無駄だよ。彼が今度倒れれば、助からないって、分かってたことだろう?」
峰「でも……」
司馬「言ってやれよ。死なせない方法ならいくらでもあるって。でもな、生きることと死なないってことは違うんだよ」
石川「……」
司馬「体中チューブ付けられて、意識もなくて、それでも生かしておいてほしいのかって、ちゃんと言って来い(と出て行く)」
石川「家族が希望している以上、僕らは最期まで手を尽くすべきだ。やれるだけのことはやってみよう」
峰「はい」

※「彼」とは当然ですが笹岡さんのことです。石川も笹岡さん本人の希望を知っていれば・・・。ところで笹岡さんの主治医は誰なんでしょう? 司馬が診療記録のノートを持っていましたが、主治医の証し? ならば石川は越権行為をしている、でもやはり司馬は周囲に対して説明が足りない、という構図?

●12:02~
司馬「無駄だ」
石川「そんなことは分かってる」
司馬「だったら?」
石川「無駄だと分かっていることでもやらなきゃいけないことだってあるんだ」
司馬「ない!」
石川「それで家族の方が満足してくれれば無駄ではなくなる!」
司馬「……早く楽にさしてやれ」
石川「家族の意志が優先だ」
司馬「苦しんでんだよ。分からないか?」
石川「見殺しにはできない!」

※無駄だと分かっていると言いながら、数秒後には無駄ではないと一貫性のない石川の発言。いやほんの数秒で無駄でないという根拠を見いだしたんでしょうね。とにかくこの回は「無駄」がキーワードです。

●14:42
司馬「笹岡さん」
笹岡「……(哀願の表情で司馬の服をつかむ)」
司馬「……分かった」

※ここから数分は、もう名台詞ではなく純粋に名シーンです。

●15:25~
司馬「はずしてくれ」
恵美「え?」
司馬「一人に、してほしいそうだ」
加世「……でも」
司馬「大丈夫だ。僕が見てる。何かあれば、僕が責任を取る」

※そして、この後、司馬がペタロルファンを注射し、笹岡さんは安らかな笑みを・・・・・・。

●20:58~
石川「なぜだ? どうしてペタロルファンを打った?」
司馬「クランケが苦しがってた」
石川「君にそんな権利はない」
司馬「……緊急処置だよ。俺が見て、必要だと判断したからペタロルファンを打った。何が悪い?」
石川「嘘だ!」

※「必要だと判断した」については嘘ではないですものね。

●22:56~
石川「司馬は墓穴を掘ったよ。これであいつもおしまいだな(と笑顔で言う)」
峰「石川先生……」
石川「……分かってる。でもこれはチャンスなんだ。僕にとって彼を倒す最後のチャンスなんだよ」

※確かに少し不謹慎な石川です。しかしあまり見せなかった人間臭さを垣間見せたとも言えます。

●23:24~
中川「あなたにしては、軽はずみだったですねえ」
司馬「笹岡さんは、早く死んだ方が、本人と、みんなのためだったんです。家族の負担はなくなるし、僕も別のクランケに付ける、助かる見込みのある
―。ベッドも空くし、新しいクランケも入って来れる。いいことづくめじゃないですか」
中川「……」
司馬「安っぽいヒューマニズムで、クランケを生かしておくのは、僕は、うんざりだ」
中川「何でそんなにベラベラ喋るの?」
司馬「……」
中川「認めちゃっていんですか?」
司馬「あなたを……、信じてますから」
中川「……」
司馬「僕がここを去る時は、あなたも当然一緒だ。あなたはそのことを分かってらっしゃる。だから……、喋るんです」
中川「……納得しました」

※司馬の強がりが痛いほど伝わってきて・・・、でもこういう司馬だからある種の魅力があるわけで・・・。

●25:58~
司馬「また余計なことを言ったそうだな」
石川「……」
司馬「そろそろ、俺にかまうのもやめた方がいいんじゃないの」
石川「……」
 

※と言いつつ、結構な割合で自分から石川に関わりに行っている司馬なのでした。

●26:45~
石川「どうして僕が病院の落ち度になるようなことをお話しするのか、不思議に思われるかもしれません。でも僕はドクターとしてこの一件を有耶無耶にすることは出来ない。家族の希望を無視し、最期まで努力することを怠り、意図的にクランケを死に至らしめるような人間を僕は同じドクターとして許すことができないんです!」
峰「……」
笹岡房江「……その先生の名前、教えていただけますか……うちの主人、殺した……」
石川「司馬……、江太郎です」

※笹岡房江(夫人)役は、2005年までアニメ『ドラえもん』でジャイアンの母の声を演じた青木和代さんです。わたくし事ですが、青木さんが女優として出ても、どうしてもジャイアンの母のイメージが強すぎて感情移入できないんです。

●27:59~
中川「トラブル続きでね……、あの人も相当お冠だってねえ。実弾ももう通用しないでしょう。……切り抜けられますか、司馬先生?」
司馬「……あなた次第、でしょ?」
中川「そういうことになるか……、やっぱりねえ」

※「あの人」とは当然ですが理事長のことです。ただ、理事長は手放しで司馬にお冠になれるほど潔癖ではないのですが。

●29:31~
石川「分かってくれ……、最後のチャンスなんだよ!」
稲村「最後なんかじゃない。君は死なない! これからいっくらでもチャンスはある!」
峰「……」
石川「……」

※本筋から外れますが、石川と笹岡さんの場合で「最後」と「最期」の漢字の使い分けが難しいです。石川にも「最期」を使うべきなのか・・・。

●30:00~
中川「司馬先生のことなんですけどねえ……、辞めてもらうかもしれません」
沢子「ペタロルファン……?」
中川「もう耳に入ってますか?」
沢子「病院中その噂で……」
中川「彼の言い分も分からないではないんでねえ……。親父さんを膵臓癌で……、あ、これは話しましたよね?」
沢子「はい」
中川「最後は植物状態になってね……、長い間寝たきりだったそうです。治らない患者を抱えた家族の気持ち……、彼はようく分かってるんですよねえ。それだけにね……」
沢子「だったら、笹岡さんの家族ともっとよく話すべきだったんじゃ?」
中川「うん……、彼はいつも独断で行動するからねえ。良かれと思ったとしても……」
沢子「いいと思いますよ。こうなった以上、司馬は責任を取るべきだと思います」
中川「……」
沢子「司馬は、先生に憧れて医者になったんです。……だから、先生からオペのミスをかばってくれって頼まれた時、かなりショックだったと思います」
中川「……」
沢子「それからですよ、司馬が、人を信じなくなったのは」
中川「……」
沢子「先生には、いつまでも立派な先生でいてほしかったんじゃないですか?」

※司馬は人を信じなくなったかもしれませんが、それでも司馬は比較的この二人に心を開き、この二人はかなりの司馬の理解者だったはずです。この二人こそもっとよく司馬と話をしてあげていれば・・・。

●32:48~
理事長「マスコミも、動き出したよ……」
中川「……そうですか」
理事長「内部告発者がいることは、間違いない。とんでもない話だ」
中川「情報の出どころは、こちらで調査します」
理事長「お願いします。――事実関係はどうなんですか?」
司馬「……何がですか?」
理事長「認めるんですか?」
司馬「……はい」
理事長「なぜなんだ? なぜそこまでして、クランケを死なせた?」
石川「司馬先生は、安楽死に関して独自の見解をもっておられるようです」
理事長「独自の見解……、というのは?」
石川「たとえ家族の同意がなくても、たとえまだ生きる望みがあっても、彼には助かる見込みのないクランケを生かしておくことはできないんです」
司馬「……」
石川「理由は一つ。無駄だからです。彼にとってクランケに最期まで尽くすという行為は無駄以外の何物でもない。君は異常だ。ドクターの、いや、人間としての常識を超えている!」
司馬「考え方の、違いでしょう」
理事長「司馬くん」
司馬「はい」
理事長「結論から言います。……病院としては、スキャンダルを最も恐れます。ここまでくると、もはや、かばいきれない。君が、自ら病院を去るのが、一番だと私は思うね。事が大きくなって、免職という形になるのは、あなたも望んではいないでしょう? ――いかがですか?」
司馬「……分かりました」
理事長「(中川に)どうですか?」
中川「司馬くんが決めたことなら……、僕もそれでいいと思います」
石川「……」
司馬「辞めさせて……、いただきます」
理事長「……助かります」

※尊厳死を目指した司馬でしたが、笹岡さんがリビング・ウィルを書けなかったために、尊厳死ではなく安楽死という形になってしまいました。ここでは、「生きる望み」の定義も難問として挙がっています。いずれにしても、笹岡さんが意志を示していてくれれば、独自の見解に走らずに済んだのに・・・。「残念だよ。本当に残念だよ……」(『SP野望篇』の尾形の台詞より)。

●38:49~
中川「君が辞めても、僕は辞めませんよ?」
司馬「……」
中川「僕には、家族がいます」
司馬「あなたが、辞めることはない。僕は死ぬまで、黙ってます……」
中川「……」
司馬「(立ち上がり)先生……、いろいろ、ありがとうございました」
中川「……」

※中川とはいろいろと駆け引きをして、一蓮托生を前面に押し出していた司馬ですが、恩師である中川を実際のところ、最後の最後は巻き込むつもりはなかった、と信じたいです。

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