どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

~日本のドラマ・映画、俳優・女優やシナリオライター(脚本家)などを徹底解剖~

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『振り返れば奴がいる』の名台詞を振り返る/第七回 「告知」(1993年2月24日)

      2015/10/24

前回、3月に『振り返れば奴がいる』の記事を書いてから、何度か「フリヤツ」を見直し、この三谷幸喜さん脚本のドラマの名台詞を記録しておくべきだという義務感が湧いてきました。よって、ここに記すことにします。

その第七回です。

※一応、時間も表記しますが、CMを除いた大まかな経過時間です。
※なお、私が参考にしたのは再放送分なので、カットされた部分があると思われます。ご了承ください。

参考資料『月刊ドラマ』(映人社、1993年3月号) ※第一回~三回の掲載シナリオ

■第七回 「告知」

司馬 江太郎(27)……織田裕二さん 石川 玄(27)……石黒賢さん
大槻 沢子(26)……千堂あきほさん
峰 春美(25)……松下由樹さん
中川 淳一(45)……鹿賀丈史さん
×   ×   ×   ×
星野 良子(27)……中村あずささん
稲村 寛(33)……佐藤B作さん
製薬会社「オノクボ」・野田……花王おさむさん

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●7:08~
司馬「今日は休みじゃねえんだよ。仕事に行け」
峰「……」
司馬「クランケが一人増えただけだ。それも胃癌。珍しくも何ともない。ド素人みたいに一人でメソメソするな! 早く行け」
峰「……(涙をぬぐって行く)」
沢子「相変わらず、優しい言葉一つかけてやれないのね。――石川先生には、絶対内緒でお願いします!」
司馬「くどい!」

※第六回で小さな友情が芽生えた司馬と石川の間に立ちはだかる、石川のかなり進行した胃癌という難病。第七回はタイトル通り「告知」をめぐって、司馬じゃなくとも「くどい!」と言いたくなるくらい、何人かの間でやや冗長なやり取りが進みます。このシーンの約4分後にはまた沢子が司馬に電話で口止めを念押しし、司馬は「くどい!」と電話を切るのですが、デジャヴかと思っちゃいました。三谷さん、脚本にかなり苦しんでいたんじゃないでしょうか。
ところで、沢子から「優しい言葉一つかけてやれない」と責められる司馬ですが、会議が終わって一旦は部屋を出たのにわざわざ戻って峰を叱咤する姿は、優しいなあと感じてしまいました。

●14:34~
中川「誤解しないでほしいのはね、あのオペね、あれ違うんだ。……疲れがたまってたのかなあ、軽い貧血でね。……だから、前のとは全然違う。これは全然違う。……久しぶりのオペで緊張したのかねえ、だらしがないねえ」
司馬「もうやめてください。あなたにはもうオペは無理です」
中川「無理じゃない」
司馬「無理です。二度と、オペ室には入らないことです」
中川「そんなに深刻に考えることでもないと……」
司馬「――いいえ。あなたが一番ご存知のはずです」

※石川のことだけでなく、中川のことも心配な司馬。そしてこの後の医療器具購入の件の準備もあり……、と八面六臂(はちめんろっぴ)の“活躍”です。しかし患者の笹岡さんにまでは気が回らなかったようで……。

●20:56~
司馬「決定権は全て僕にあると考えてください」
星野「分かりました」
司馬「あなたにとっても正念場だ」
星野「よろしくお願いいたします」
司馬「……言葉じゃ分からない」
星野「……」
司馬「億単位の金が動く話だ。おにぎり程度の差し入れじゃ、箸にも棒にもかかりませんよ(とタバコをくわえる)」
星野「承知しました(タバコの火をつける)」
司馬「一緒に、いい思いをしましょう」
×   ×   ×   ×
  星野、廊下に出る。
星野「野田さん」
野田「ああ、どうも」
星野「今日(きょう)は……」
野田「何か、司馬先生に呼ばれてね」
星野「おたくの会社もですか?」
野田「何すかねえ(と行く)」
星野「何よっ、両天秤ってこと?」

※司馬と星野のシーンでは、二人のダーティーな細かい言動が見事で何度も見てしまいます。「おにぎり程度の差し入れ」とは上手い表現ですね。オノクボの野田を意識しているかのようです。石川の癌があって司馬の黒いイメージが無くなるかと思いきや、そうはならないのが、このドラマの奥深い魅力です。
この後の野田役の花王おさむさんも良い味を出してますね。「何すかねえ」の言い方が好きです。

●24:13~
中川「インフォームド・コンセントという言葉をご存知ですよね」
沢子「はい」
中川「うん、納得ずくの医療っていうことです。病気が、患者の生命を脅(おびや)かす危険性が高ければ高いほど、医者と患者との間にはより深い信頼関係が必要です。そして、対等であるべきです。石川くんは、どうなんだろう。僕にも少し迷いがありましてね」
沢子「すみませんが……、お答えできません」
中川「うん、失礼。ここは一つ、ドクターとして協力をお願いしますよ」

※「インフォームド・コンセント(説明と同意)」は、1993年当時には、医療関係者の間では、確認するまでもなく、馴染みの用語だったと記憶しているのですが、まだ聞き慣れない一般視聴者向けに挿入された説明でしょうか。中川が告知を迷って沢子に相談するというのも、少し冗長に感じます。

●25:59~
石川「僕は胃癌かもしれない。それも……、スキルスかもしれない。思いもしなかった、始めは。でも人に言われて改めて自分の症状を考えてみたんだ……、客観的に。どうも間違いないような気がする」
峰「思い込みですよ」
石川「それは違うと思う」
峰「だけど胃潰瘍だって」
石川「確かに平賀先生は僕に胃潰瘍の再検査だと」
峰「そうです」
石川「しかしそれは嘘だと思う」
峰「どうしてですか?」
石川「レントゲン写真は確かに胃潰瘍だった。でもそんなことは患者に対してはよくやる手だ」
峰「石川先生も告知主義者ってことはみなさんもよく知ってます」
石川「そうなんだよ……。だからそう信じたいんだけど」
峰「先生、考えすぎですよ」
石川「本当のところを聞いて来てほしい」
峰「困ります」
石川「峰くん」
峰「そんなこと頼まないでくださいよ。私、嘘つくかもしれませんよ」
石川「……君がやっぱり胃潰瘍だったと言えばその時は……、僕は信じます」
峰「……」
石川「君の言うことなら僕は信じる」
峰「先生……」

※石川は同じく再検査を受けに来ていた中年男性・北別府(北見敏之さん)からの指摘で自身の癌に疑いを持ち始めます。実人生でも、案外、見ず知らずの人の言葉の方が気になってしまうものかもしれませんね。この心配性の北別府は自分は癌に違いないと思っていたのですが、実は単なる胃潰瘍なのです。それはこの回をよく見ていれば分かるのですが、石川のことばかり注目していたので、何度か見直してようやく気付きました。

●27:27~
司馬「だから俺は最初から言ってるんだ、告知すべきだと」
峰「……」
司馬「癌にかかったクランケが、ドクターに疑いをもった時、ドクターは本当のことを言ってやるべきなんだ。嘘がバレれば、彼にとってはその方がショックが大きい」
峰「私には言えません……」
司馬「闘う意志のない人間ならともかく、石川はそうじゃない」
峰「でも……、言えません」
司馬「君も医者なら分かるだろう。彼には知る権利がある」
峰「……」
司馬「言ってやれ」

※素人の疑問として、今回は「告知」ばかりがメインテーマになっているのですが、司馬の手にも負えないと冒頭で言っていたのに、告知したところで、その後どう治療すべきか決めていたのでしょうか。告知した場合としない場合とで生存期間にどれくらい違いが出るのでしょうか。とにもかくにも隠すのはよくないという姿勢なのでしょうか? いや、つまり私が「インフォームド・コンセント」の言葉の真意を理解していないだけの話でしょうね、冗長だと言いながら。

●32:25~
峰「笹岡さんのあんな楽しい顔、初めて見たんです」
稲村「クラリネットはさ、あの人の生きがいなんだよ。それを他の患者の迷惑だとか、特別扱いはしたくないとか、どうしてそこまで言わなければいけないんですか!」
司馬「ちょっと待ってくれ。君たち、上っ面(つら)だけのヒューマニズムだったらやめた方がいいと思うよ。それに、俺はやめろとは言ってないつもりだが?」

※気を利かせすぎた前野が「司馬主任の命令」として笹岡さんのクラリネットを禁止したために生じた誤解です。しかし司馬のこれまでの評判を考えると致し方ない面もあるように思われます。ところで、前野から報告を受けた司馬は、野田と話があるので「忙しい」と前野に任せたのですが、ほんの数分で話し合いが終わっているらしいのは、ドラマとして少し脇の甘さを感じてしまいました。

●34:35~
石川「君はドクターを辞めるべきだ」
司馬「聞こえない」
石川「君はドクターには向いていない」
司馬「あ、そう?」
石川「笹岡さんの身に何かあったらどう責任を取るつもりだ?」
司馬「はあ?」
石川「とぼけるな! 君にはクランケをいたわる心はないのか?」
司馬「何いきり立ってるんだよ」
石川「僕は知ってる。君が大学に居られなくなった理由だ」
司馬「何言ってるんだ」
石川「君はとうの昔にドクターを辞めるべきだった」
司馬「お前に言われたくないね」
石川「君は8人のクランケを殺している。君は殺人者だ」
司馬「……」
石川「安楽死だって言いたいのか? けどそれは言わせない」
司馬「誰もそんなことは言ってない」
石川「安楽死は立派な殺人だ」
司馬「そのことで、君と議論するつもりはない」
石川「誤解しないでほしい。僕は君を認めているんだ」
司馬「……意外だな」
石川「君は、僕が知ってる中で最高のドクターだ、
……技術の面では」
司馬「ありがたいね」
石川「でも君はドクターを続けるべきじゃない! ミスを犯しそれを償わなかった時点で君はもうドクターであるべきではなかった。いくらその後一流の技術を身に付けたとしても――」
司馬「違う!」
石川「何が違う!」
司馬「お前は何にも分かってない。……バカだ、お前は。人のことを詮索する暇があったら、自分のことを心配しろ(と立ち去る)」
石川「どういう意味だ……。どういう意味だ!」

※笹岡さんの「クラリネット事件」に頭が来ている石川は、司馬を屋上に呼び出して糾弾します。しかし石川の胃癌のことが気掛かりな司馬とは噛み合いません。もどかしさを抱えた司馬はこの後、医局に戻って、本棚から本を落として軽く暴れます。よく見直してみると、この頃から石川のことが気になって仕方なかったのですね。

●38:44~
司馬「このクランケ、君ならどう判断する……」
石川「……」
司馬「どう思う?」
石川「……スキルスだ」
司馬「進行具合は?」
石川「……かなり進んだステージだ」
峰「(入って来て)司馬先生っ」
司馬「どいてろっ。……俺の意見とぴったりだ」
石川「……誰のだ」
峰「司馬先生!」
石川「誰のだ!?」
司馬「(声を震わせて)お前のだ!」
石川「……!」
司馬「……お大事に」

※冒頭では「俺には興味がない」と沢子に言い放った司馬ですが、自身のポリシーと共に、石川が薄々気付いていることを見るにつけ、ついに告知してしまいました。司馬江太郎という医師がこれまで発した「お大事に」の中で最も悲しい「お大事に」でしょうね。

●41:47~
峰「ごめんなさい……」
石川「君が謝ることじゃない……。僕は分かってた。僕だって医者だ、自分の体のことぐらい……」
峰「……ごめんなさい」
石川「もういい! もういーい!! ……負けないよ、……僕は勝つ。……勝ってみせる!! 癌にも……、そしてあの男にも」

※ここで出ました、石川の記憶に残る絶叫、「もういい! もういーい!!」。本当に進行癌になったらこれくらい取り乱して当然ですよね。しかし、司馬が最初に予想した通り、諦めずに闘う、と。司馬だからこそ見抜けた石川の対応なのでしょうか。
ところで、司馬は話の流れによって歩いて帰ったり(高級)車で帰ったりするのですが、今回のラストシーンは車でした。最終回の“あの日”も車で帰っていれば……。

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