どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

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『振り返れば奴がいる』の名台詞を振り返る/第五回 「致命的な失敗」(1993年2月10日)

      2015/07/17

前回、3月に『振り返れば奴がいる』の記事を書いてから、何度か「フリヤツ」を見直し、この三谷幸喜さん脚本のドラマの名台詞を記録しておくべきだという義務感が湧いてきました。よって、ここに記すことにします。

その第五回です。

※一応、時間も表記しますが、CMを除いた大まかな経過時間です。
※なお、私が参考にしたのは再放送分なので、カットされた部分があると思われます。ご了承ください。

参考資料『月刊ドラマ』(映人社、1993年3月号) ※第一回~三回の掲載シナリオ

■第五回 「致命的な失敗」

司馬 江太郎(27)……織田裕二さん
石川 玄(27)……石黒賢さん
大槻 沢子(26)……千堂あきほさん
峰 春美(25)……松下由樹さん
中川 淳一(45)……鹿賀丈史さん
×   ×   ×   ×
星野 良子(27)……中村あずささん
山村 忠光(34)……宮沢風太郎さん

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●1:45~
中川「君を推す声もあったんだけどね。司馬先生、えらく患者に評判悪いから」
司馬「好かれようと思ってやってませんから」
中川「うん、だから、いいんだよ、ね、君は今のままでね。出世を望むタイプでもないでしょう?」
司馬「……ええ」
中川「ちょっと、悔しい?」
司馬「全然」
 

※石川が「参事」という肩書きを得ると聞かされた後のシーンです。中川の「ちょっと、悔しい?」、司馬の「全然」。二人の喋り方が印象的すぎます。特に司馬の「全然」の表情が凄い。

7:10
沢子「けっこう粘っこい性格?
石川「……
  

※「粘っこい性格」という表現、よく思い付きましたね。いかにも沢子らしい表現ですよね。

●9:07~
石川「正直に言います。僕は彼を買っている。彼は技術的には素晴らしいドクターです。だからこそ残念でならないんです。どうして彼がああいう生き方しかできないのか……。彼に何があったんですか?」
沢子「彼は……、司馬は私にも何も……」
 

※研修医時代の司馬のあだ名が「ドクター・ステルベン」だったと、前回、第四回で石川に教えたのは沢子のほうでした(「ステルベン」はドイツ語で「死亡」)。しかし、沢子は当時交際していたのに深いことは知らないと。男勝りの性格に見える沢子ですが、「恋は盲目」だったのでしょうか。

●20:24~
司馬「ありがとう。悪いね。――石川、くん」
石川「よし、すぐオペだ。準備しよう」
沢子「了解」
石川「先にやっててくれ。僕はむこうを見てから行くから」
司馬「はい! 参事」
石川、出て行く。
司馬「……張り切りやがって。バカが……」
 

※このシーンの司馬の変わり身は物凄いですね。ここの織田さんは単に演技が上手いというレベルを超えています。三谷さんの脚本にはどこまで書き込まれていたのか、織田さんはどこまでアイデアを出したのか、非常に気になります。

21:02
司馬「麻酔医、どっち取る?」
石川「え?」
司馬「沢子ともう一人」
石川「どっちでも」
司馬「沢子、もらうよ」
石川「どうぞ」
司馬「いいの?」
石川「どういう意味だ?」
司馬「……」
石川「……」
 

※確かに「どういう意味だ?」と思わせる不思議なシーンです。石川が麻酔医の希望を言うような人間でないことは司馬も重々承知のはずなのに。司馬はこの日、石川が沢子と食事に行っていたのを知っていて、さぐりを入れたのでしょうか。まさか司馬ともあろう人間が、“嫉妬”?

●30:57~
司馬「俺はやましいことは何一つやってない」
沢子「クランケを殺しといて?」
司馬「殺してない」
沢子「偶然だって言うの?」
司馬「そうだ」
沢子「すごい偶然」
司馬「すごい偶然だろ」
沢子「……分からない」
司馬「何が?」
沢子「あなたが。私が5年間付き合ってた男って一体誰なの? あんなに一緒にいたのにね……」
司馬「……」
 

※今まで視聴者に司馬の気持ちを代弁してくれていた沢子にも分からないという司馬の深層心理。この頃にはもう作者・三谷さんの手を離れて一人歩きしていたのかもしれませんね、良い意味で。よく漫画の名作では、登場人物が勝手に動き出して自身はそれを紙に記録するだけだったと作者が振り返ることがありますが、それに近い状態ではなかったのでしょうか。

●33:01~
司馬「俺、あんた嫌いなんだよ」
星野「どうして嫌いなんですか?」
司馬「あんたも相当ツラの皮厚いな。あんまり細かい動き、しない方がいいと思うよ」
 

※さすがツラの皮の厚い星野です、嫌いと言われても簡単にはへこたれませんね。しかしそれでも司馬ほどは細かい動きはしていないと思いますけど。似た人間ほど意識して嫌悪してしまう人間の性(さが)でしょうか。

●34:58~
山村「手遅れか?」
司馬「これだけ血管がやられてればね」
山村「明らかに診断ミスだな」
司馬「……うん。……誰だ、担当医は」
山村「石川先生」
司馬「……ふぅん」
山村「今からじゃどうしようもない。1時間も保(も)たないですね。無駄なオペはしない、――ですか?」
司馬「……いや、やろう」
山村「――!」
 

※オペをすると聞いた山村はかなり驚いています。司馬の行動は謎が多いですが、今回ばかりは石川への対抗心にのみ突き動かされたと考えてもよいのではないでしょうか。中川から石川が参事になると聞かされた後、鏡を叩き割るくらい怒り心頭だったのですからね。

●38:20~
司馬「あれじゃあ俺でも手のくだしようがない。もうちょっと早ければね、石川参事!」
石川「……」
 

※どのみち助からないと分かっていた司馬。どんな言葉で石川を叱責しようかとワクワクしながらオペに臨み、死亡を確認したのでしょうね。だから、司馬の思惑通りになった後、今回のラストシーンでは、仕事を終えた帰り道で気持ち良さそうに雨に打たれていました。

●41:04~
沢子「不可抗力のような気がする。……ああいう状況だったんだし……」
石川「だからこそ、適切な判断が必要だった。……僕のミスだ」
 

※「しょうがない」でも「やむを得ない」でもなく「不可抗力」。これが最も沢子の台詞にふさわしい表現ですよね。

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