どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

~日本のドラマ・映画、俳優・女優やシナリオライター(脚本家)などを徹底解剖~

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『振り返れば奴がいる』の名台詞を振り返る/第一回「おまえが嫌いだ」(1993年1月13日)

      2015/07/17

前回、3月に『振り返れば奴がいる』の記事を書いてから、何度か「フリヤツ」を見直し、このドラマの名台詞を記録しておくべきだという義務感が湧いてきました。よって、ここに記すことにします。

改めて観賞してみると、やはり三谷幸喜さんといえども、連続ドラマの脚本を書くのは初めてだし、もともと別の人が書く予定だったし、不案内なシリアスドラマというジャンルだし、ということもあって、展開に難点もいくつかあるように感じました。

時間を埋めるためか、AさんとBさんが話していたことを、またAさんとCさんが話したり、あるいは、けっこうな時間を使っての登場人物が何か考えているシーンも、実は時間稼ぎなんじゃないかと思えたり。

それでも、素晴らしい役者、演出、音楽などの相乗効果でドラマ史に残る傑作に仕上がっています。

参考資料『月刊ドラマ』(映人社、1993年3月号) ※第一回~三回の掲載シナリオ

※一応、時間も表記しますが、CMを除いた大まかな経過時間です。
※なお、私が参考にしたのは再放送分なので、カットされた部分があると思われます。ご了承ください。

■第一回「おまえが嫌いだ」

司馬 江太郎(27)……織田裕二さん
石川 玄(27)……石黒賢さん
大槻 沢子(26)……千堂あきほさん
峰 春美(25)……松下由樹さん
中川 淳一(45)……鹿賀丈史さん
×   ×   ×   ×
山村 忠光(34)……宮沢風太郎さん
笹岡 繁三郎(41)……坂本あきらさん

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

●7:00~
司馬「何分だった?」
前野「ああ? 1時間と50分」
司馬「新記録だな」
前野「ほんの少しじゃない」
司馬、手を差し出す。
前野「(1万円を手渡し)痛いよなあ」

※第八回のサブタイトルにもなっている「新記録」ですが、司馬はいつでも新記録を意識していたのですね、賭けのためとはいえ。

●12:09~
司馬「最近どうなんだよ?」
沢子「何が?」
司馬「何か良いことあった?」
沢子「何にもないよ、良いことなんか」
司馬「……お前にはさ、幸せになってほしいんだよ、俺は」
沢子「バカモン」

※初期の頃はこういう司馬と沢子の比較的ラフ(ラブではない)な会話が出て来ます。

●14:14~
司馬「笹岡さん、泡立ってるよ。――冗談ですよ(と苦笑する)」

※患者の笹岡さんは、麻雀の手が良いと点滴が泡立つらしい、を受けた司馬の発言です。司馬にしては珍しい「冗談」ですね。まだ司馬のキャラが確立していなかった面もあるのかもしれません。

●21:35~
石川「どんな感じ?」
山村「えらそうだね、この人」
石川「……すいません」
山村「間違いないですね、肺挫傷」
石川「それと脾臓破裂」
石川「脾臓破裂?」
石川「ここ!」
山村「……めざといねぇ」

※石川の、医者としての技術の高さと、医療に対しては誰が相手でも物怖じしない人間性を表しているシーンです。それと、放射線科医師の山村の「めざといねぇ」の言い方が好きです。

●23:53~
石川「ドクターがいるのか?」
峰「はい」
石川「早く呼んで来て」
沢子「あの人は駄目」
石川「どうして?」
沢子「当てになるような人じゃないんです」
石川「何を言ってるんですか、医者だったら当然――」
沢子「そういうタイプじゃ――」
石川「早く呼んで来てください」
峰「分かりました!」

※「●●だったら当然――」と、「当然」で終わるところが石川の良さです。

●24:06~
司馬「断る」
峰「先生」
司馬「俺、当直医じゃないんだよ」
峰「でも」
司馬「自分で何とかしろ」
峰「……」
司馬「あの患者はオペの段階で既に手遅れだった。助かる見込みはゼロ。――死なせてやれ」

※司馬の、とても医者とは思えない発言。しかしこれは序の口に過ぎないのでした。

●26:50~
石川「司馬先生というのはどちらですか?」
司馬「……ああ、司馬、帰りましたよ」
石川「帰った?」
司馬「ええ、今さっき」
石川「……失礼しました」
笹岡「司馬ちゃん、ロン!」

※石川が司馬を探しているのに、石川がまだ司馬の顔を知らないのをいいことに、司馬は「もう帰った」としらばっくれます。その会話を聞いていたはずの笹岡さんですが、手が良かったのか思わずバラしてしまったシーンです。
後にシビアな関係になる司馬と笹岡さんですが、「ちゃん付け」で呼んでいた時期があったんですね。

●27:18~
石川「オペしか手はないと思うんだ」
司馬「その前に、誰だ、あんた?」
石川「明日からここに配属される石川といいます」
司馬「だったら、明日来い」
石川「……」
司馬「あんたにうちの患者とやかく言う権利ないよ」
石川「非常事態なんだ」
司馬「俺に指図する権利もない」
石川「指図なんかしてない。僕は医者として当然するべきことを――」
司馬「俺は行かない! 理由は2つ。俺は非番だということ。今日はオペを3回やった。休養が必要なんだよ」
石川「これで休養してることになるんですか?」
司馬「2つ目。あのクランケはどうせ死ぬ」
石川「……見殺しにしろって言ってんのか?」
司馬「見殺しにしろって言ってんだよ」
前野「……」
笹岡「……」
司馬「俺、無駄なオペはしないよ」
石川「……それでも医者か?」
司馬「そうだ」
石川「患者が苦しんでるのに胸が痛まないのか?」
司馬「モルヒネ打っとけ」
石川「……驚いたなぁ」
司馬「そう?」
石川「ようく分かった」

※「見殺しにしろって言ってんだよ」にはさすがに同席していた笹岡さんたちも引いてしまいました、何しろ患者ですから。石川の「驚いたなぁ」は視聴者の代弁そのものですね。

●33:09~
沢子「司馬くん! お願い、手伝って」
司馬「明日早いんだよ」
沢子「もう一人クランケが増えちゃったのよ」
司馬「知るか」
沢子「てんてこ舞いなのよ、上も下も。たまには私の頼みも聞いてよ」
司馬「俺オフなんだよ」
沢子「分かってるわよ」
司馬「オフっていうのは仕事しないことをいうんだよ」
沢子「クランケはどうなるの?」
司馬「医者だって長生きしたいんだよ。仕事に追われて、体壊して死にたかないんだよ」
沢子「今日だけ」
司馬「俺がどんな男か知ってるだろ」
沢子「……」
司馬「帰っていいか?」
沢子「院長先生から電話あったの。代議士の息子だって」
司馬「それがどうした?」
沢子「やる気になったんじゃないの、少しは?」
司馬「……」
沢子「そういう男でしょ、あんた」
司馬「……」
沢子「早く行ってやんなさいよ」

※シリアスな場面にも「てんてこ舞い」という少しかわいい表現が、緊張を緩和させてくれます。司馬は長生き願望があるようですが、仕事に追われなくても、危ない橋を渡ってばかりじゃ、先は長くないかもしれないと自覚すべきでしたね。

●40:42~
石川「司馬くん。君は院長がらみの患者しか診(み)ないのか」
司馬「……当たり前だろう」
石川「医者に患者のえり好みはできないはずだ」
司馬「俺オフなんだよ。オフに何したって俺の勝手だろう?」
石川「人の命を何だと思ってる? 患者の命を何だと思ってる?」
司馬「何だよ? 教えてくれよ」
石川「(司馬の胸倉をつかみ)僕は認めない。今まではそれで通ってきたかもしれないけど、僕は認めない!」
司馬「誰だお前。何つかんでんだよ。離せよ。疲れてんだよ。――離せよ!(と振り払い、歩き出す。そして
、中川に)お先に
中川「はい、お疲れさん」
石川「どうしてなんですか!?」
中川「うん、何が?」
石川「どうしてあんな人間を置いとくんですか!? 同じ医者として僕は恥ずかしい」
中川「理由は一つ。彼は最高の技術を持っている」
沢子「代議士先生の息子さん、心臓が停止してたんですって」
中川「あいつだから、助かったんだ」

※第一回のラストシーンです。司馬と石川の最初の戦いですね。「僕は認めない」と「同じ医者として僕は恥ずかしい」の、フリヤツを代表する名台詞が2つ、登場しています。

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