どらま!ドラマ!DRAMA! 2nd Season

~日本のドラマ・映画、俳優・女優やシナリオライター(脚本家)などを徹底解剖~

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忘れてしまう前に思い出してください、『WITH LOVE』(1998年4月14日~6月30日)に川村カオリさんが、一瞬一瞬いたことを

      2015/06/25

川村カオリさんが亡くなってから1ヶ月が経ちました。

この間、彼女の音楽、がん闘病のドキュメンタリー、そしてタイトルにあるドラマ『WITH LOVE』を振り返り、在りし日を偲んでいました。

私がカオリさんを知ったきっかけは、きっと多くの方と同じように、1990年頃の山田邦子さんの冠バラエティー(女性芸人では今でも異例なことですね)『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』の出演者として。そして『神様が降りてくる夜』、リバイバルの『翼をください』といった曲を唄うシンガーとして、また『オールナイトニッポン』のパーソナリティとして、多感な時期の私を支えてくれました。

特に「オールナイト」は、どんなコーナーがあったかほとんど覚えていませんが、自身のルーツであり、当時動乱にあったソ連、そして後のロシアに熱い思いを持ち、ゴルバチョフとのコンタクトを試みていた、その熱気はよく覚えています。それに、名曲『ZOO』はオールナイトで初めて聴いたと記憶しています。若者なら誰でも共感できるところがあるような歌詞ですよね。当時はもちろん、後の大作家・辻仁成さんプロデュースなんて知るよしもありませんでしたが(ただ辻さんは2000年7月~9月の『愛をください』を見る限り、連続ドラマの脚本家としての才能は無いように思いました。あまりに冗長で)。

そういえば山田邦子さんとは同じ乳がんの“戦友”として、昨年、乳がんの早期発見を促す「ピンクリボン」という活動で再会したそうですが、邦子さんのブログでカオリさんの死について触れられていないようで、ちょっと残念な気持ちになりました。「女性自身」というブログ提供元に何か制約があるのでしょうか。もしかしたら私が知らないだけで、どこかで声明を出したのかもしれませんが。
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その後、「やまかつ」や「オールナイト」は終了し、私も色々なことに目が向くようになって、カオリさんをどこか忘れてしまっていました。実際のところ、カオリさんは数年間活動を休止していたんですね。

 

そんな私が再びカオリさんに出会ったのが1998年のフジテレビのドラマ『WITH LOVE』。内容は、この2年前公開の映画『(ハル)』にインスパイアーされたと思われるもので、間違いメールを通じて知り合った男女(男性→長谷川天〔たかし〕=竹野内豊さん/女性→村上雨音〔あまね〕=田中美里さん)が、実生活では単なる知り合い程度の関係ながら、パソコンの中では相手が身近にいる人とは知らずに心を通わせていく、というものでした。そこで語られるのは「愛」「仕事」「お金」といった普遍的なテーマで、パソコンに興味がない人の鑑賞にも堪えられるものでした。興味のある方は脚本を担当した伴一彦さんの公式サイトのシナリオ全掲載をご覧ください。それにしても、主人公たちのパソコンのOSのヴァージョンは「Windows95」! そしてモニタはデカいブラウン管タイプ! そういった意味でも歴史的に貴重なドラマですね。

歴史的価値で言えば、もう2点言及すべきことがあります。一つは、当時「日本におけるフランス年」を記念して、フランスのパリにあった自由の女神像が、ドラマの言葉を借りるなら、「出張中」で東京のお台場に来ていて、それをドラマの重要なファクターとして使用していたことです。もちろんそこには、社屋がお台場に移ったばかりのフジテレビの宣伝が見え隠れしてはいたのですが。ただし、これは、後にフランス政府から“レプリカ”の制作が認められて、本物がフランスに戻された1年後の2000年にはまたお台場に設置されたので、自由の女神像があること自体は珍しくなくなったのですが。

もう一つは、1998年と言えばサッカーワールドカップ・フランス大会の年で、ちょうどこのドラマの最中に開催されたのですが、当時日本代表の監督を務めていた岡田武史さんの名前を、最終回に少しだけ登場した人物に使用していたことです。雨音の勤める銀行にはいささか仕事をなおざりにする雰囲気があり、それを打破してくれそうな厳然としたリーダーシップある支店長の名前として借用していたのです(演じたのは村野武範さん)。こういう「遊び」はこのドラマの雰囲気にはやや不釣合いに思えましたが、なかなかタイムリーで面白かったです。なお、フランス大会の結果はご存知の通り日本代表は全敗だったわけですが、10年の歳月を経てまた岡田監督が復帰しているところを見ると、やはり優れた指揮官なのではないでしょうか。来年の南アフリカ大会に期待します。

 

さて、カオリさんが演じたのは主人公・天の昔の恋人・リナ役で、リナは天とはバンド「アッシュ」の仲間で、そのバンドのヴォーカルでもありました。天は間違いメールの相手=ハンドルネーム「てるてる坊主」がリナではないかと考えてメールを始めたという設定でした(リナがある理由から、天の前から突然姿を消した時に残した物が、てるてる坊主だったのです)。

カオリさんは最終回(Last Version)と、最終回1つ前の回(Ver.11)のラストのシーン以外は回想の出演で、出演回数、出演時間は少なめでしたが、天の人となりを表す上で重要な役割でした。回想の場面では、顔は映像ではちゃんと映されず、またクレジットでも最終回以外は「KAORI」表記(最終回のみ「川村かおり」 ※当時は平仮名の「かおり」表記)で、視聴者に対して謎めかした存在にされていました。私もドラマ中盤あたりで友人から指摘されるまで認識できなかったので、見事に戦略にはまったわけです。

余談ですが、竹野内さんが演じたのはCM音楽の作曲家で、CM音楽に留まらずインストゥルメンタルのオリジナルアルバムも出すといった音楽プロデューサー的側面も持っている役柄で、当時の、小室哲哉さん(先ごろライブで復活しましたね)や小林武史さん(サザンオールスターズ、Mr.Children、My Little Loverをプロデュース)や伊秩弘将(いぢちひろまさ)さん(SPEEDをプロデュース)の人気の高さ、影響力の強さがうかがえますね(つんく♂さんはまだ当時は関係ないですね)。何せ、『WITH LOVE』の直後のドラマ『神様、もう少しだけ』でもまた金城武さんがモロに音楽プロデューサーを演じているくらいですから。なかなか同じ時間帯(火曜21時)の前後のドラマでほぼ同じ職業の主人公を設定するなんてないですよ。それと、よく見ると当時の竹野内さんと金城さんって顔と髪型がよく似ていましたね。

 

またも余談ですが、このドラマの音楽を担当したのが岩代太郎さん。『行列のできる法律相談所』でおなじみの日本テレビアナウンサー松本志のぶさんの夫ですね。岩代さんが作ったサウンドトラック『ONCE IN A BLUE MOON 長谷川天 イメージアルバム』が翌1999年の「第13回日本ゴールドディスク大賞」で「インストゥルメンタルアルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、岩代さんはメインテーマ『ONCE IN A BLUE MOON』の演奏と受賞スピーチをしたわけですが、そのスピーチが自信に満ち満ちていたのをよく覚えています。この時、岩代さんくらいの自信家じゃないと「長谷川天」の作った曲と呼べるような曲は作れないんじゃないかと思いました。岩代さんは近年でも映画『レッドクリフ』の音楽や、北京オリンピックの日本シンクロチームの曲を担当したりと、自信にたがわない活躍をしています。

さらに余談ですが、この頃、音楽の岩代さんと主演の田中美里さんは3作連続でタッグを組んでいます。すなわち、NHKの朝ドラ『あぐり』(1997)、『WITH LOVE』(1998)、日本テレビ『お熱いのがお好き?』(1998)です。美里さんに何か岩代さんの創作意欲をかき立てるものがあったのか、単なる偶然かは分かりませんが。とにかく『あぐり』のサウンドトラックのセルフライナーノーツでも岩代さんは「あぐり組曲(AGURI SUITE)」に対して自信あふれるコメントを寄せていました。

最後の余談ですが、美里さんは6月まで『WITH LOVE』、7月から『お熱いのがお好き?』と連続で出演したのですが、前者の最終回が6月30日で、後者の初回が7月1日と、1日しか違わなかったのです。前者がシリアス系で、後者がコメディーだったので1日でそのギャップに対応するのはけっこう大変でした。

 

ようやく本題ですが、リナと天が所属していた「アッシュ」の代表曲が『MINIATURE GARDEN(ミニチュアガーデン)』。劇中ではリナが作詞したという設定でした。この詞の内容、そしてリナという女性の生きざま。これが実際のカオリさんとダブるところがあり、何とも感慨深いものがあるのです。

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小さな手のひらに  小さな箱がある
小さな夢がある  並べてあげる
忘れてしまう前に  思い出してください
貴方の腕の中に  一瞬一瞬いたことを
この空は広すぎて  青すぎて・・・怖くなる
この空は高すぎる

この星の何処かに  何処かにはあるよね
私の知らない     いない処が
もうここにはいたくない もう消えてしまいたい
堕ちていく星の様に  堕ちていく場所もない
この詩(うた)は終わらない
この夢は終わらせない

体だけ抱きしめないで   気持ちごと抱きしめてよ
この空に果てがあるなら  いつか ねぇ 連れて行ってよ
永遠を知りたくて      永遠になりたくて
気付いて  気付いて  気付いて欲しかった
震えて    怯えて     貴方の箱の中で
約束なんてしないでよ
小さな世界で・・・

(曲:岩代太郎  詞:KASHA)

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『WITH LOVE』の後、しばらく時間が経つと私はまたカオリさんを頭の片隅からも追いやってしまっていたので、がんとの闘病、そして逝去という状況がなければ今現在、カオリさんのことを考えることはなかったでしょう。どうして私のような人間が漫然と生き続け、カオリさんが愛娘を残して旅立たなければならないのか、と考えたりまします。それでも残された者として、カオリさんが一瞬一瞬いたことを、忘れてしまう前に思い出すことは、続けていきます。

川村カオリ オフィシャルブログ「川村カオリの調子はいいんだけど…。」by Ameba

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